甘い誓いのくちづけを
程なくして休憩に入ろうとすると、榊原課長がさゆりにも休憩を取るように告げた。


“オフィスの王様”と呼ばれている割には気が利く課長らしいやり方に、彼女はその全てを理解した上で頷いた気がした。


「……で、何があったの?先に言っておくけど、『別に何もないよ』なんて言われても信じないからね」


一昨日と昨日に有休を取っていたさゆりは、今朝出勤してすぐにあたしを見てから、ずっと怪訝な顔をしていた。


だから、休憩室でコーヒーに口を付けた直後に飛んで来た問いは、寸分の狂いも無いような予想通りのものだった。


「色々あったの……」


あたしが紡いだ答えに、さゆりは眉を小さく寄せた。


「色々って?」


「まだ、よくわからないんだ……」


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