甘い誓いのくちづけを
すっきりとした表情を見せたさゆりが、また小首を傾げた。


「で、そのEdelsteinがどうかしたの?」


一瞬だけ悩んだ後で、彼女の瞳を真っ直ぐ見つめる。


「理人さん、そこの専務で……。もっと言うと、御曹司だったの……」


周囲には誰もいないけど、何となく声のトーンを落とした。


「………………は?」


それからたっぷりの沈黙を経て落ちたのは、さゆりらしくないマヌケな声。


それでも、彼女はあたしの表情を見て察したみたい。


「冗談……じゃないみたいね。じゃあ、瑠花が変なのはそれが発覚したのが原因って事?」


無言のまま、コクリと小さく頷く。


あの日から心を独占している不安は、未だに膨れ上がっていっているのだ…。


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