甘い誓いのくちづけを
心臓が、大きな音を立てる。


BGM代わりのアクアリウムの水の音も、他のお客さん達の囁く程度に聞こえていた話し声も、シャットアウトされてしまって…


あたしの周りだけ、時間が止まったような気がした。


「唇を噛み締めながら涙を堪えて彼の話を聞く君を、どうしても放っておけなかった」


優しい声で、たけど確かな意志を秘めた低い声音(コワネ)に、止まっていた時間がゆっくりと動き出す。


同時に、あの時からずっと堪えていた悲しみの熱が一気に込み上げて来て、あっという間に視界が滲んだ。


慌てて唇を噛み締めたけど、今度こそ自分の内(ナカ)から溢れ出そうとするものを堪えられそうに無い。


そんなあたしの弱さを見透かすように、理人さんが再びあの優しい笑みを浮かべた。


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