甘い誓いのくちづけを
確かに話をするつもりで会社に来たけど、理人さんのマンションに行くとなるとまた別の覚悟が必要で。


今の自分(アタシ)にとって、それは簡単に準備出来るものじゃなくて。


そんな事を考えていると、ここに来る時以上に気が引けてしまった。


「ありがとうございます……」


それでもとりあえずお礼を述べると、相模さんがフワリと微笑んだ。


「あの日からの専務はどうやら心の方が優(スグ)れないようで、毎日ため息ばかりついておられます」


「え?」


「でも……あなたの顔を見れば、専務はきっと大変喜ばれるでしょうし、明日からはため息も減るかと思います」


目を小さく見開いたあたしに、相模さんはとても優しい口調でそんな風に言った。


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