甘い誓いのくちづけを
我慢しよう、と思った。


結婚さえすれば、文博の気持ちがまた元通りになると思いたくて…。


きっとただの気の迷いなのだと、信じていたくて…。


少しの間だけ、婚約者(カレ)の浮気に気付かない振りをしようと決めた。


何よりも、文博の事が好きだから、彼を失いたくなかった。


だから、『文博となら上手くやって行けそうな気がする』と思うようにして。


『相性だって悪くは無いんだから』と、自分自身に何度も何度も言い聞かせて。


いい大人を装って、『現実を見なければいけない』と必死で割り切ろうとした。


だけど…


「……無理って……事………っ、気付いて……たっ……」


そんな事をしたって無駄なんだって事を、本当はもうわかっていた。


< 41 / 600 >

この作品をシェア

pagetop