甘い誓いのくちづけを

顔を上げて視界に入って来た理事長の表情は、いつもと変わらず優しい雰囲気のままだった。


だけど…


さっきの質問に何か込められたものがあるのかもしれないと勘繰って、すぐに口を開く事が出来なかった。


何よりも、血の繋がった両親の愛情を受けて育った自分(ｱﾀｼ)が、簡単に自分の答えを口にしてもいいとは思えなかったから…。


「わ……わかりません……」


「どうして？」


やっとの事で答えたあたしに、理事長がすかさずその理由を求めて来た。


容赦の無い質問に、理事長の顔を見る事が出来なくなる。


「あたしには血の繋がった両親がいて、何不自由なく育てて貰ったからです……」


それでも、一瞬悩んだ後で素直な気持ちを言葉にして、一呼吸置いてから再び口を開いた。