甘い誓いのくちづけを
悲しみを帯びた心が痛み出したけど、それでも自分自身の言葉でゆっくりと続きを紡いだ。


「“他人だから愛せない”なんて、絶対にないと思います……」


「そうね」


理事長は小さく頷いて、優しい笑みを浮かべた。


「じゃあ、もう一度訊くわ」


廊下をパタパタと走る子ども達の笑い声と足音を聞きながら、理事長から紡がれるであろう言葉を予想して体が強張ったけど…


「血の繋がりがなければ、本当の親子にはなれないと思う?」


今度は躊躇う事無く、ゆっくりと首を横に振った。


「そんな事ないです……」


恋人も夫婦も、そのほとんどがきっと元々は赤の他人だったはず。


だけど…


そこには確かに、お互いの“愛”があると思うから…。


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