甘い誓いのくちづけを
ただただ胸の奥が苦しくて、熱を帯びた瞳の奥からあっという間に涙が込み上げて来た。


「……っ!」


「泣かないで」


理事長は優しく言って、あたしの心を癒すようにそっと抱き締めてくれた。


「ありがとう、瑠花ちゃん。あなたは、とても心優しくて温かいお嬢さんね」


どうしてそんな言葉を貰えたのかは、よくわからなかったけど…


言葉足らずなあたしの気持ちを理解して貰えた気がして、胸に抱いた苦しさが少しだけ和らいだ。


「あなたみたいな優しい子が傍にいてくれたら、あの子の心も救われたのかもしれないわね……」


困ったように微笑んで独り言のようにそう零した理事長が、誰の話をしているのかはわからない。


だけど…


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