甘い誓いのくちづけを
「さぁ、涙を拭いて。子ども達が待ってると思うから、お庭へ行ってあげてくれるかしら?」


優しい笑顔で促されて、独り言のように呟かれた言葉の真意は訊けなかった。


「ね?」


「はい……」


あたしは涙を拭いながら小さく頷いて、理事長に何とか笑顔を返す。


「ありがとう、瑠花ちゃん」


どうしてお礼を言われたのかがわからなくて小首を傾げると、理事長はどこか意味深な笑みを浮かべた。


「あなたみたいな子に来て貰えて、私も子ども達もとても幸せよ」


突然の言葉に目を見開きながらも、何の取り柄も無い自分の事をそんな風に思って貰えた事が、本当に本当に嬉しくて…


この日をキッカケに、これからも青空園に通う事を決めたのだ――。


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