甘い誓いのくちづけを
あたしの瞳を見つめたままの理事長は、とても優しげな笑みを浮かべた。


「あの時のあなたの答えに、救われた人がいるもの」


「え……?」


キョトンとしたあたしに、理事長が意味深に笑って見せる。


「庭のブランコを見た?」


「あ、はい……」


支離滅裂な会話の流れに戸惑いながらも、何とか内容を理解して頷く。


すると、理事長が窓の方を見た。


理事長の視線の先あるのは、きっとそのブランコ。


「あのブランコはね、寄付して貰った物なの。ある人が、『ブランコが壊れた事で大切な女性(ヒト)がとても悲しそうな顔をしてたから、どうしても放っておけないんです』って、プレゼントしてくれたのよ」


振り返ってどこか悪戯な笑みを見せた理事長に、あたしは目を大きく見開いた。


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