甘い誓いのくちづけを
「中に入ってもいいか?」


「え?」


「どうしても話したい事があるんだ。ほんの少しで構わないから……」


文博からの申し出に、また戸惑いが大きくなる。


後ろめたい事は何も無いとは言え、彼の言葉を聞いて真っ先に思い浮かんだ理人さんの笑顔が胸の奥をキュッと締め付けた。


「……近くのカフェじゃ、ダメ?」


気まずさを感じつつもやんわりと拒絶の姿勢を見せると、文博は一瞬だけ目を見開いた後で小さく頷いた。


「……そうだな」


「ちょっと待ってて……」


「あぁ」


一旦部屋に戻って、理人さんに会いに行く為に用意していたバッグを持つ。


そして、彼の帰国の時間を気にしながらも腕時計を着け、戸惑いを抱いたまま再び外に出た――…。


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