甘い誓いのくちづけを
「どうって事ない、と思ってた……」


ポツリと呟いた文博が、おもむろに天井を仰いだ。


「ちょっとくらいの浮気なら何とでもなるだろう、って……。例えバレても何とかなるだろう、って……。そんな、無責任で自分勝手な考えでいたんだ……」


あたしの方にゆっくりと視線を戻した彼は、どこか傷付いているようにも見える。


「瑠花の様子を見て、別れる1ヶ月くらい前からお前が浮気に気付いてた事もわかってた。だけど……たぶん俺は、心のどこかで瑠花に問い詰められる事を期待してたんだと思う」


「え……?」


「瑠花に問い詰められて、瑠花が泣いてくれる事を……期待してたんだ……」


文博は自嘲気味にフッと笑って、まるで独り言を呟くように言葉を紡いだ。


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