甘い誓いのくちづけを
「……笑顔よ、瑠花(ルカ)」


自分自身に言い聞かせる為に小さく小さく呟いて、左手の薬指にゆっくりとリングを着けた。


あたしが着けるとリングが浮いているように見えるのは、打算的に結婚を決めた自分(アタシ)の心が渇いているからなのかもしれない。


それでも、この結婚をやめる訳にはいかない。


だって…


今年で25歳になるあたしがこの先、今よりも良い条件を持った男性(ヒト)と出会えるとは限らないし、文博との相性だって悪くは無いんだから…。


恋愛や結婚に夢見がちでいられるのは、まだ現実を知らない少女の頃だけ。


あたしはもう、現実を見なければいけない。


例え、これからの人生を寄り添って歩んで行く相手を信じる事が出来なかったとしても、そうするべきなのだ…。


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