甘い誓いのくちづけを
こっ酷く叱られたばかりで総務部のあるフロアに戻るのは、とてつもなく憂鬱だった。


だけど…


午後からの業務は待ってはくれないし、学生のようにサボれないのが社会人。


さゆりに促されて重い足取りで戻ったあたしは、真っ先に課長の元へと足を運んで頭を下げた。


「榊原(サカキバラ)課長、先程は本当に申し訳ありませんでした」


若くてイケメンな課長は、女性社員達から『目の保養になる』なんて言われているけど…


「次はないと思えよ、荻原」


冷酷で厳しい性格から、お世辞にも人気だとは言い難い。


「はっ、はい!」


体をビクリと強張らせて深々と頭を下げたあたしに、課長は午後の業務に取り掛かるように告げてからどこかへ行ってしまった――…。


< 97 / 600 >

この作品をシェア

pagetop