今さらなのよ!

隆祐は俯いて、そしてその場で深々とおじぎした。


「社長、書状読ませていただきました。
能力に目覚めてから、監視されていることはわかっていました。

けれど、プライベートなところまではいってこないし、敵のように仕掛けてこないから不可解だったんです。

こんな能力はあるけれど、じつは社長のお顔だって俺よく知りません。
しかし、社長がほんとに俺のことを親身に考えてくださったことはわかります。

俺の意思は、できればこの会社で普通に社員として細々と生きていきたいです。
能力はなるべく使わないでいたいんです。」



そこまで、隆祐が念を送ったところで、隆祐の携帯電話から着信音が鳴った。



「はい・・・社長ですか。」



「ああ。この方が自然な動作だと思ってね。
能力を使いたくないといっているのに、携帯電話を使わないとはね。

山でもそこは元観光地だから圏外ではないよ。
私の意思も伝えておこう。

君の行動如何では、とんでもない部署にいくこともあるやもしれん。
だが、私は君が人としての幸せを望むかぎり、うちの社員であるかぎり、できる限りのことはするつもりだからね。

これは先祖からの命令なんだよ。
今は亡き、君の一族の人たちから先祖は恩恵を与えてもらっていたのさ。

ほんとに個人的なことなんだがね。

だから、私のことを信頼してほしい。
側近のポストも考えていたけれど、それはお互いのためではなさそうなのでね、これでもいいか?」



「も、もちろんです!ここに来させていただけたのも感謝してるんです。
社員としてはまだまだですから、よろしくお願いします。」



「そうか。では、これからもよろしく頼む。
それと・・・私の写真をメールしておく。少しはずかしいがな。
いずれ、また会おう。」



「はい、ぜひ!」


電話はすぐに途切れ、写真がメールで送られてきた。


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