千尋くん、千尋くん






「だから、俺が日本に戻るっつったら、彼女のこと残していけないから兄ちゃんは残るって」




「瑞穂くん……」




「俺、言ったんだ。あるみのことはいいのかよって」




「瑞穂、くん……」




「だけど、説得できなくて」





「瑞穂くん…っ」





「…………あるみ」





話の途中で大声をあげたあたしに、瑞穂くんは驚いたように言葉を失った。






「もう、いいの……聞いてみただけだし。大丈夫、だから……」




「……………」






大丈夫、なんて言いながらもきっと声は震えていた。






だけどもう、聞きたくない……。



ううん、聞けない……。











< 373 / 397 >

この作品をシェア

pagetop