黄緑絵の具


ベリアルが急に立ち上がり、僕はビクッとなってしまった。

怒らせてしまったのだろうか。

『ベリアルさん?』

呼び掛けると、ベリアルが何か放り投げてきた。

それはパッケージが色褪せた、絵の具のチューブだった。

『お前が本気で気に入った。
だからそれをやる。
フォルネウスからくすねた物じゃ』

そう言ってベリアルは柔らかく微笑む。

『とんでもない! 魂抜かれるとか嫌です。
いりません!!』

僕が本気で拒否すると、ベリアルは溜め息をついた。


『見返りはいらぬ。フォルネウスは芸術に精通しておる。
お前の役に立つはずじゃ。
孤独な絵描き殿』

僕はハッとなった。
なぜ話してもないことがわかったのだろうか。


『礼をくれると言うなら、お前が欲しいの』

またしてもベリアルはいやらしく笑った。

この悪魔め。
さっきからそればっかりだ。

言い返そうとした時、異変が起きた。

ベリアルの身体が透け始めている。


『長居しすぎたようだ。
我が必要になったらそれを燃やせ。
お前の為なら、いつでも来ようぞ』


それだけ言うと、ベリアルの身体は消えてしまった。

ベリアルがいた場所には黒い紙が落ちている。


拾い上げると、濃い紫色の光が浮き上がる。

それは見たことのない、怪しげな文字の羅列だった。


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