ネクロフィリア【加筆執筆中】
「……お待たせ」

ぼーっと、彼女が倒れていた辺りを見つめる俺の頭上から声が降る。
顔を上げなくても誰だかわかる。

その声のトーンや調子などで、どんな表情なのかも想像できる。

たった、一週間だっていうのに。


何も言わない俺に彼女は更に続けた。


「……入ろうか」

「え?」

そう言うと、藤井さんはそのマンションのエントランスへと進んでいく。
俺は慌ててその後ろを追いかけながら藤井さんに尋ねた。


「どういう事?」


藤井さんは俺の顔を見ると、眉を下げて微かに笑った。


「……ここ、私の住んでるマンションなの」

「………え」


こんな偶然。


俺がここにいて。
藤井さんと出会った事。


偶然なんかでなく、必然だったんだ。


「ごめん、黙ってて…。
なんか、言えなくて。
だって、飛び降りがあったマンションだなんて言えないじゃない」

「……」

藤井さんが今までどうして、送らせてくれないのか。
最後になってわかった。

彼女はどうして、そんな事気にしていたのだろう。


自分も今、ここで死のうとしているのに。

方法は違うと言えども。

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