組対のデカ
 捜査のためなら、何でもありのようなところがある。


 検事バッジを付けている以上、警察官とでも対等に渡り合えた。


 単に銃器等を持ってないだけで。


 六月初旬の東京は曇りや雨が続くものの、基本的に蒸し暑い。


 温度が上がっている。


 警視庁上層部の人間たちは未だ長谷川転落死事件の帳場が置かれていることに対し、憤懣しているようだった。


 なぜ捜査が終結点へと向かわないのか……?


 あの事件は自殺に見せかけられた他殺だったとデカたちは皆そう踏んでいたのだし、転落したビルの屋上に置いてあったワープロ打ちの遺書からは大塚会構成員の北川嘉美の指紋が検出されている。


 北川が大塚会トップにいて、組員たちを一手に束ねている山本陽一の指図で、長谷川を自殺に見せかけて殺害した可能性が強まってきた。


 山本は過去に数度、組対四課のデカたちが逮捕した前科がある。


 警視庁の前歴者データベースにも載っている通り、完全な凶悪犯だった。
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