温かい春の訪れ【完】
ひとつめの春

ずっと隣にいた彼。
でも、今日その彼とお別れをする。

八嶋幸介は私の大好きな人
私のとても大切な人
そして私の名前は、宮谷彩子

「俺、東京の大学にいっせ(行こう)と思とる」
去年の夏、彼にそう告げられた。
そのときは苦笑いをするしかなかった。

彼はずっと東京の大学に行きたいと
言っていた。
でも、私といるようになり彼は
私たちが住んでいる宮崎県で大学を
選ぼうとしていた。

無理しているように見えた。
あんなに行きたがっていた大学を
諦めようとする幸介。

私は、嬉しいの反面辛かった…
無理して宮崎で大学を探す彼に
私は、こう言った。

「幸介、無理しなくていいの。私のことは気にしなくていっちゃが(気にしなくていい)。幸介には夢じゃった(夢だった)大学に行ってほしい。」
彼はあの日、私に背を向けて泣いていた。

いつか言われる…そう分かっていたのに。私が望んだことなのにやっぱり苦しい。
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