太陽には届かない
良平に惹かれている。

これは紛れも無い事実だ。

金曜日の夜、林カオリと良平がどんな風に過ごしたのか分からない。

あの二人の接点がどこにあるのかも全く理解できないし、かと言って彼女という肩書きのない自分には、問い詰める権利もなく、ましてや詮索するなどという下品な真似も出来ない。

陽菜は自分を見失っていた。

泰之の彼女でありながら、良平に心惹かれている。それなのに、泰之にはいい顔をして、さも自分は遠距離で寂しい思いをしているような素振りを見せたり、いずれは泰之と結婚しますというような意思をちらつかせている。


『結婚詐欺師みたい…』


目を閉じたまま、そうつぶやく。

つぶやいてから、自己嫌悪に陥り、起き上がる。


『帰ろう…。』


陽菜はカバンの中から、紙とペンを出すと、泰之にメッセージを残した。


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泰之へ

おかえりなさい。

素敵な空間をどうもありがとう。
陽菜にはもったいないくらい。

前より沢山、こちらに来ないと
バチが当たりそうだね。

また連絡します。

陽菜

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陽菜はこのメッセージを書きながら、オペラ座の怪人の仮面を思い出していた。

あの白い仮面にの下にかくされた、本当の素顔を誰にも見せられずに…。

今の私は、あんな仮面を被っているのかもしれない。

そう思いながら、引き戸を閉め、玄関の鍵をかけた。
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