太陽には届かない
二兎を追うもの

漁夫の利

それからまた、3ヶ月が過ぎた。

泰之の元へは1ヶ月に1回のペースで訪れ、良平ともやはり1ヶ月に1回のペースで関係を持っていた。

土日だからといって、良平が陽菜を呼び出すことはなかったし、陽菜も特に良平を誘う事はなかった。もちろん、デートらしく出かけた事はない。大抵食事をしたり、吉田や由梨やカオリを交えた後に二人でこっそり会っていたくらいだった。

そんなある土曜日、陽菜は吉田からの電話で目が覚める。


『もし!陽菜、おはよう!』


寝ぼけ眼で時計を見ると、時刻は朝8時30分。真昼間なのではと思う位、元気な声に辟易する。


『吉田…アンタ何で朝早くからそんなに元気なのよ…。』


陽菜が不満そうに答えると、吉田は“こんな天気いいのに寝てるなんて、バカだなぁ~お前”と前置きしてから続けた。


『今日ちょっと、付き合ってくれよ!飯おごるからさ!』


陽菜は吉田の言葉に“バカはお前だ!土曜の朝から…”と言いながら


『私、今日は洗濯とかしたいんだけど。』


と答える。


『分かった!じゃあ、家の事は今からやれば、2時間で終わるだろ?午後1時にお前んちの下に迎えに行くからよ、ちゃんと支度して来い!』


『はぁ?アンタそんな勝手に…』


『おしゃれして来いよ!あと、化粧もちゃんとしろよな!』


『ちょっと…よし…だーっ、もう!』


陽菜の抗議の声もむなしく、電話はぷつりと切れた。

< 66 / 94 >

この作品をシェア

pagetop