太陽には届かない

一石二鳥

頭が痛い。ガンガンする。完全に二日酔いだ。

陽菜はふと、吉田の後姿を思い出す。二日酔いの日はそれと分かるくらいよれていた。

自分もはたから見ればそうなのかと思い、昨日の飲みすぎを反省する。と同時に、なぜ由梨にあんな話をしてしまったのか、後悔していた。酒の席でプライベートを暴露し、牽制球でも投げたつもりでいたのだろうか。

よれよれになった洋服を脱ぎ、ぬるいシャワーを浴びる。冷蔵庫の中から、泰之のためにと置いてあった栄養ドリンクを取り出し、一気に飲み干す。それでものどの渇きは収まらず、ミネラルウォーターをほぼ1本飲み干した。

携帯電話をチェックすると、昨夜11時過ぎに泰之から着信が入っている。全然気がつかなかった…。陽菜は慌てて折り返すが、やはり泰之は出ない。もうとっくに出社しているのだろう。

着替えを選ぶのもめんどくさくなった陽菜は、その辺にかけてあったワンピースを取り出し、そのまま着込む。その上にジャケットを羽織り、今日はこれで出社することに決めた。


出社早々、吉田が耳元で大きな声を出す。


『おっす陽菜!』


『おはよ…てかアンタうるさい!』


『おっ?オマエまさか二日酔いか?!めっずらしいなぁ~、何した?』


『何したって…二日酔いなんだから飲んだに決まってるでしょ…。』


カカカカっと機械的な笑い方をしながら、いつものように陽菜の頭をポンっと叩く。


『オマエがおとなしいと、何だか女に見えるな!』


失礼な言葉を吐いて、そのまま足早に立ち去る。
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