東京+ラブクラフト








クーラーの、よく効いた喫茶店





道を見渡せる窓際


席ひとつのエリアが広く
ベビーカーを入れるのに結構楽なのだと
アイスティーを飲みながら
綾香ちゃんが、肩を回しつつ言う





「 マジで婦人警官なっちゃったんだー 」





「 うん 綾香ちゃんこそ
結婚してるなんて思わなかったよ 」





「 私だってそうよー

"永遠のお姫様なの!"って
ずーっと思ってたんだけどぉ



―――… 王子様に、
出会っちゃったのよねえ 」





「 幸せそうだなあ!

どこで知り合ったの?! 王子様に! 」





すると綾香ちゃんは
コソリと私の耳に、口を寄せた





「 合・コ・ン

… 築十五年の
"コーポ・白亜"って名前のお城で
毎日優雅に、安売り探して
詩集ならぬ広告に
目、血走らせてまっす 」





綾香ちゃんが、
ちょっと眉を上げて笑って
私もその表現に、吹き出してしまう





――――― 思わぬ再会





それはとても、嬉しい出来事だったけど
私の心は、まだあの頃に
飛んで行っているままだった







< 62 / 369 >

この作品をシェア

pagetop