触れないキス
「どうしたの!? こんな時間に」

「立花さん! ねぇお願い……教えてほしいことがあるの!」


8年前のあの日、柚くんに会いに来た時のように必死に懇願する私を見て、立花さんはただ事じゃないと思ったんだろう。


「……わかったわ。わかったから、少し落ち着いて話しましょう?」


そう言って、私を待合室の隅の椅子に座るように促した。

立花さんは椅子に座らずに、私の前にしゃがんで顔を見上げる。

話を聞いてくれる時にこうしてくれるのは昔から変わらなくて、なんだか安心するんだ。


ようやく息が整って落ち着いたところで、私は単刀直入に切り出した。


「立花さん……本当のこと言って?」

「本当のこと?」

「8年前、柚くんは……本当に退院したの?」


その時、立花さんの表情が一瞬で強張ったのがはっきりと分かった。

戸惑うように目を伏せる立花さんを、私はじっと見つめる。

そして何かを決心したように、立花さんはふっと顔を上げた。


「ごめんね、瑛菜ちゃん。実はね──」


< 103 / 134 >

この作品をシェア

pagetop