触れないキス
『もっと早くに打ち明けるべきだったのよね。ごめんね、瑛菜ちゃん……。本当にごめんなさい……!』


あの気の強い立花さんが、泣きそうな声で何度も謝ってくれた。

でも、立花さんは何も悪くない。

もちろん、柚くんも。

二人とも、私を想ってしてくれたことだったのだから。


立花さんは出来ることならずっと、私が柚くんを忘れるまで、嘘をつき続けようとしてくれてたんだと思う。

だけど、私は柚くんを忘れることは出来なかった。


そんな時に突然現れた“そら”。

誰とも話さない。携帯も持っていない。

いつも誰もいない美術室にいて、柚くんと同じ話をする──。


彼にはいつも謎がつきまとっていた。

けれどその謎が、今すべて繋がった。


病院に来る前、校舎を出た時にあの占いをしてくれた女の子を見かけた。

その彼女に、私は思い切って聞いたんだ。

『あなたのクラスに……“そら”っていう男子はいる?』と。


すると、彼女はまた無表情のまま、

『いいえ……』

と言って、小さく首を横に振った。

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