触れないキス
「本当のこと……言えなくてごめん」


やっぱり、そらは──


「そらは……柚くん、なんだよね……?」


私の問い掛けに、そらは僅かに切なげな笑みを浮かべてこくりと頷いた。

この笑みが、口調が、きっと“本物”なんだろう。


「俺は……ずっとここでキミのことを想ってた」


“あんた”じゃなくて“キミ”。

少しずつ昔の片鱗を見せ始める柚くんを、鮮やかな花火が照らす。

初めて見た、“そら”が描いていた絵のような花火が──。


「瑛菜ちゃんが早く俺のことを忘れて、別の誰かと幸せになるように……ってずっと祈ってたんだよ。

だけど、立花さんの──俺の嘘を信じ続けたキミは、今でも俺のことを覚えていてくれた。

そんなキミに真実を伝えられたらいいのにって、いつからかそればっかり思うようになってたんだ」


立花さんの言った通りだ。


──『柚希くんが瑛菜ちゃんを忘れるわけないんだから大丈夫よ』


柚くんは亡くなってからも尚、私のことばかり考えてくれていたんだ……。

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