触れないキス
今日も健康診断が終わってから、片付けをする立花さんと少し話をしていた。


「瑛菜ちゃんももう高校生かぁ」

「それ何回も聞いたよ。ていうか、立花さんだってお母さんじゃん」

「そーね……もう年は取りたくないわぁ」

「十分若いって」


綺麗だし身体もスマートで、とても二人も子供がいるようには見えない。

彼女の私服姿はあまり見たことがないけれど、きっとファッションセンスだって若いはずだもん。

私はため息をつく立花さんを見て笑った。

椅子に座ってだら〜っと机に突っ伏しながら、目線だけ立花さんに向ける。


「ねぇ、立花さん……」

「んー?」


たくさんのファイルをまとめる彼女を呼んではみたものの、次の言葉が出てこない。


「……やっぱいいや」


目線を机に戻して、ため息混じりに漏らした。


私は立花さんに会うたびに聞いていた。柚くんのことを。

柚くんの情報を得られる可能性があるのはあの病院しかない。

もしかしたら病院に来たりしたんじゃないかって、未だに勝手な期待をしてしまうから。

だけど、立花さんから返ってくる言葉はいつも決まっていた。


『ごめんね、瑛菜ちゃん……』


“来てない”とはっきり言わないのは立花さんの優しさだと思う。

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