触れないキス
文化祭当日、女装をすることになった桜太くんのメイクを頼まれていた私は、またもやトリップしてしまったがために大失敗。

ファンデーションを塗りすぎて白くなった肌に、濃すぎるアイシャドウ。真っ赤なグロスは唇からはみ出している。

イケメンな桜太くんでもこれじゃさすがに……!


「おい! 何で鏡隠すんだよ!?」

「み、見ちゃダメ! すぐにやり直すから!」

「ピエロ……ピエロがいる……! だっはははは!!」

「あんだとー!?」


笑い転げる凛の隣で、数人に取り押さえられた桜太くんのメイクを急いで拭き取る私。

このピエロメイクは、後に最高傑作と言われたのだった。


私達のクラスの出し物は軽食を出す喫茶店、その名も『WKB45』。

誰が名付けたのか、なんともゴロが悪いネーミングなんだけど……。

WKBは若葉祭の“わかば”から、45はクラスの人数から来てるらしい。

で、それだけじゃ面白くないからと、ホールに出る男子数人が女装することになったのだ。

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