触れないキス
ひんやりしたオーラを感じる人形みたいな彼女は、さらに意味深な発言を続ける。


「これが未来を暗示するカードです」

「これは……?」

「死神です」

「しっ、死神!?」

「安心してください、逆位置ですから」


ひぃぃと叫びたいくらいの気持ちになっている私に、平然と言う彼女。


「あなたの恋は叶わないかもしれませんが、どちらの男性も、あなたを不幸にする存在ではありません。
むしろ、幸せに導いてくれる存在となるでしょう」

「そう、ですか……」


抑揚も、感情もない口調でただ淡々と話す彼女は、本物の占い師みたいだ。

信じる信じないは関係なく、ただ凛についてきただけの私だけど、いつの間にか真剣に聞き入っていた。


「ただし」


釘を刺すようなその接続詞が聞こえ、私は顔を上げる。

彼女はカードを見つめたまま同じ調子でこう言った。


「“幸せ”と言っても、その形は人それぞれですので。それを承知しておいてください」

「幸せの形……」


私の恋が叶わなくても、二人は私を幸せに導いてくれる?

でも、その幸せの形は人それぞれ……

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