触れないキス
「って、どういうことですか?」

「………」


無表情のまま、彼女はあからさまに深いため息を吐き出した。


「! ご、ごめんなさい!!」


ぎゃーなんか怖い! 無表情だから余計に!!

無意識のうちに勝手に口が謝っていて、私は必死に自分の中で答えを出そうと試みた。


「と、とりあえず……私はこの想いを抱いていてもいいんですよね?」

「えぇ。お気の済むまでどうぞ」


お気の済むまでって。

占いでも私はしつこい女だと出てるのかな……。

微妙な顔をしてるだろう私に、彼女は更に意味深なことを言う。


「死神の逆位置が意味するのは“死後の再生”。つまり、転機が訪れる可能性を示しています」

「転機……」

「あなたが前へ進むことが出来る日は近いのかもしれません。早ければ数日内に」


数日内って、もしかしたらこの文化祭中に何かあるかもしれないってこと?


「……ホントに?」

「………」

「あぁっ、ごめんなさい! 決して疑ったわけじゃ……!」


彼女は終始無表情で、私は終始しどろもどろのまま占いは終了。

この文化祭で、こんな不思議体験が出来るとは思わなかったよ……。

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