やっぱり、好きだ。
 
 「相変わらずだな、サヤ子は。昔から、他人に優しく自分に厳しいな。教師になりたかった事、本当になかったから、今までは教師の仕事を『妥協』って思ってた部分があった。でも確かに、昔から人に数学教えるの好きだった。塾講のバイトも楽しかったし、サヤ子に教えて、サヤ子がどんどん数学解けるようになる姿を見るのも嬉しかったし。博士を諦めたのは事実。だけど、教師は天職だと思ってる。だから、そんなにムキになって抗議すんなよ、サヤ子。でも、ありがとう。俺の仕事を『昔からなりたかったもの』にしようとしてくれて、嬉しいよ」

 青山くんは、眉を八の字にしながら笑うと、私の頭を撫でた。

 ・・・嘘と言えば。

 「青山先生、私に『嘘つき』って言いましたよね?? 心外なんですけど!!」

 私も私で、聞き捨てならなかった事を思い出し、私の頭を撫でる青山くんの手を握って止めた。

 「嘘つきじゃん。『自己犠牲はしない』とか言っときながら、何の案も浮かばないサヤ子先生は、結局自分1人で処分受けようとしてたっしょ」

 「・・・」

  言い返せない。でも、そんなアホな子みたいな言い方しなくてもいいのに。

 反論を考えていた時、
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