やっぱり、好きだ。
 『好きだ』と伝えなければ、サヤ子を『彼女だ』とはっきり言わなければ、どんなに他の女と遊ぼうが浮気しようが、サヤ子に俺を咎める権利はないから。 それでも『やめて欲しい』と懇願するサヤ子をちょっと面倒くさいなとすら感じていた。サヤ子に嫌な思いまでさせて、そうまでして遊び呆けて、俺は何をそんなに楽しんでいたのだろう。

 卑怯な自分に嫌気が刺す。

 

「ちゃんと好きだから、これからも傍にいたいんだって伝えたい」

 真剣に話す森田は、本気でサヤ子の事が好きなんだ。

 他人に聞かせるには恥ずかしい言葉も、躊躇なく言えるくらいに。

 どうして俺は、森田の様に誠実になれなかったのだろう。

 俺だって同じなのに。サヤ子の事が好きなのに。いつも傍にいたいと思うのに。

 だけど、森田とならサヤ子はずっと笑っていられるのかもしれない。

  泣かせてばかりの俺より森田の方が、サヤ子を幸せに出来るのかもしれない。

 「俺、ちょっと先行くわ」

  残りのうどんを勢いよくすすり上げ、食器を片して学食を出た。
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