真夜中のキス[短編]
***
『美紗!!
俺、俳優デビュー決まったんだ!!」
『……え?』
それは、高校1年の時だった。
高校に入ってすぐ、翼は雑誌の読者モデルを始めた。
もともと整った顔立ちだった翼は、勿論すぐに人気が出た。
突然の翼の言葉に、あたしは声を詰まらせた。
『前から来てたプロダクションの人がさ、俺の事気に入ったらしくて…』
翼は嬉しそうに笑って、そう話している。
―――嬉しい。
そりゃ、あたしだって嬉しいよ。
でも……嫌だよ…
あたしは小さい時からずっと、翼のことが好きだった。
だから、なおさら寂しかったんだ。
翼が違う世界に行っちゃうみたいで…
翼が遠くに離れて行っちゃうみたいで…
『―――…良かったね!!
翼、頑張ってたもんね。
…おめでとう!』
だけどあたしは、出来る限りの笑顔でこう言った。
『―――美紗。
俺、これから忙しくて会えなくなるかもしれない。
けど…美紗には側にいて欲しい。
俺と―――付き合ってくれない…?』
『……え』
翼から告白されて付き合い始めたのも…この時からだった。