真夜中のキス[短編]


***


『美紗!!

俺、俳優デビュー決まったんだ!!」


『……え?』




それは、高校1年の時だった。

高校に入ってすぐ、翼は雑誌の読者モデルを始めた。
もともと整った顔立ちだった翼は、勿論すぐに人気が出た。



突然の翼の言葉に、あたしは声を詰まらせた。




『前から来てたプロダクションの人がさ、俺の事気に入ったらしくて…』




翼は嬉しそうに笑って、そう話している。


―――嬉しい。
そりゃ、あたしだって嬉しいよ。

でも……嫌だよ…



あたしは小さい時からずっと、翼のことが好きだった。
だから、なおさら寂しかったんだ。


翼が違う世界に行っちゃうみたいで…
翼が遠くに離れて行っちゃうみたいで…




『―――…良かったね!!
翼、頑張ってたもんね。

…おめでとう!』




だけどあたしは、出来る限りの笑顔でこう言った。




『―――美紗。

俺、これから忙しくて会えなくなるかもしれない。


けど…美紗には側にいて欲しい。
俺と―――付き合ってくれない…?』


『……え』




翼から告白されて付き合い始めたのも…この時からだった。


< 2 / 10 >

この作品をシェア

pagetop