DARK HERO 処刑人&闇医者
「まぁ、聞けよ。お前、最近街中で噂されてんぞ」

「噂…?知るか、勝手に言ってろ」

「DARK HERO」


路地裏から出ようとした俺を引き止めるように、樫原はネイティブな声で呟いた。

一々ムカツク野郎だ。


「殺すぞ」

「おい、なんだそりゃ。物騒な日本語使ってんじゃねーよ」

「Uccidere」

「誰がイタリア語で言えっつったよ。いいから話聞けって」


舌打ちして煉瓦造りの壁に寄りかかった。

自分の体温が、壁と一体になる。

視界に入るのが煩わしいから、足元に転がってる死体を爪先で少し退かした。



「若者からの人気急上昇、闇の英雄だってよ」

「いつ足がついた」

「さぁね…目撃者でもいたんじゃねーのか?」

「報道中か」

「うん、すんごい騒ぎよあんた」

「イタリアの暴動よりマシだろ」

「暴動と殺人を天秤にかけてんじゃねーよ、偽善者」

「殺されてぇのか」

「今更かよ、俺達は常日頃から殺し愛してる仲じゃねぇか」



余裕ぶった樫原の笑みが見えた。

今度はどんな殺し方でお前を逝かせてやろうか、俺は口内でそう呟く。


「さて、マイハニーはおねんねしちまったし、俺も行くかな」


吸い終えた煙草を安物の灰皿に押し付け、樫原は軽やかにアパートから飛び降りた。

さっき俺が退かした死体の側に樫原は静かに着地すると、立ち上がって肩にかけていた上着のスーツに腕を通す。

シワを整え、白いシャツを隠すように黒いスーツに身を包ませると、樫原は鍵を取りだし微笑んでみせた。


「おい、ドライブするぞ」
< 2 / 12 >

この作品をシェア

pagetop