DARK HERO 処刑人&闇医者
黒いバンに乗り込み、後部座席に座った。

運転席の樫原がエンジンをかけて、初っぱなからスピードを出す。

すっかり染み付いたその荒い運転に、俺は黙って席にしがみつく。


運転規制のきつい日本でそのスピードはねぇよ。


いつしかお前が言っていたあの台詞を、今そのままそっくり言い返したくなった。



「どこ行くよ、キャバでやらかすか?」

「一人で行ってこい」

「相変わらず退屈な野郎だな、お前はゲイなんか?」

「殺すぞ」

「おい、俺の車に穴空けんなよ」



運転席にナイフを突き立てると、樫原は見抜いたようにそう言った。

俺の殺気を感じ取るのだけは成長している。



「女はいいぜ、全てを包み込むあの包容力…たまんねーよ」

「セックスの良さはどうでもいい、あんなのは犬猫の交尾となんら変わらない」

「…お前、ぜってぇ人生の半分は損してるよ」

「他人が俺の人生について語るのは虫酸が走る、やめろ」

「他人ねぇ…居候の身でよく言うぜ」

「居候の身であろうが、殺意が沸けばそれは只の殺戮対象者だ」



俺は再びナイフを突き立てる。

樫原は静かにコンビニの駐車場へ車を停めた。


あのよ、と樫原が振り返りながらナイフを払う。


「お前面倒くせぇ、そういう事しか頭に浮かばねーわけ?」

「少なくとも、お前みたいに女の裸は浮かばねぇ」

「最もだ。ちょっとコーヒー買ってくるから待っとけ」



訳がわからん、日本人の中にはおかしな奴がいるもんだ。


車の窓から見える同種族を見て舌打ちした。

狭苦しい、こんな箱に閉じ込めてんじゃねぇよ。


俺は鍵が掛かったドアを開けた。
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