心―アナタノモノガタリ―



薄暗い街が朝日を浴びて、目を覚ます頃。


私は食堂で朝ごはんの支度をしていた。


周りでは、仲間たちがせっせと働いている。


チラリと窓の外に目をやると、東の空が明るい。


そろそろ皆が起きて来る頃だ。


周りを見渡すと、大体準備は整った様子。


フウと息を吐いて、額の汗を拳でぬぐった。




「ソラ、おはよう」


「リブ!おはよう、今日も頑張ろうね」




にっこり笑って、朝食のトレイを渡す。


やっぱり一番のりはリブだった。


昨日夜遅かったはずなのに、ブラウンの軽くウェーブした髪は綺麗に整えられている。


リブは私に淡く微笑み返すと、トレイを受け取って席に着いた。


リブ、本名リブラーは、能力者だった。


肌身離さず身に着けている腰のサーベルが彼女の能力。


そして、片耳に光る赤いピアスが彼女のトレードマークだった。


ちなみに、ソラというのは、私の名前。


本名はソラディアという。


私も一応能力者ではあるけど、能力が発覚していないから、皆のお手伝いをしている。


起きて来る仲間たちにトレイを渡しながら、なんとなく気分が沈む。


まだ見ぬ自分の能力のことを考えると、どうしても暗くなるのだ。


皆は命を懸けて戦っているのに、私は何もできないなんて…。


ハアと深いため息が思わず口から漏れた。




「ソーラ!朝から深いため息つくなって!

おはようさん!」


「レイ!!ごめんごめん、おはよう!

はい、朝ごはんだよ」




ハッとして顔を上げると、にこにこしたレイの姿があった。


短く刈り上げた金髪がトレードマークのレイ、本名レイナードも、能力者だった。


彼の能力は手に光るガントレットの怪力。


そして、トレイを受け取ると、まっすぐにリブの隣へ歩いて行った。


そう、リブとレイは恋人同士なのだ!


私はニヤニヤしながらその後ろ姿を眺めて、仕事に戻った。



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