家元の花嫁【加筆修正中】


「椿さん、彼女は使用人ではないわ。隼斗の婚約者の園宮ゆのさんよ。」


「婚約者!?」


「これからは、会う機会も増えると思うから…宜しくお願いしますね?」


「おぅ、これはこれは初めまして。華道家の桐島です。隼斗くんも、とうとう結婚かぁ。新年早々おめでたい話題で何より。それでは…」


会釈して桐島夫婦は奥の茶室へと。


「あの…本当ですか?」


桐島の娘は呆然と立ち尽くして…。


「えぇ。もう、すでにうちに住んでるのよ。ねぇ、ゆのちゃん?」


「えっ……はい……」


私は“婚約者”という言葉で固まってしまった。


「もしかして、その帯留め…」


「えっ?」


私は指差された帯留めに触れた。


「椿さんご存知なの?この帯留めは、代々家元の妻に受け継がれるもの。私がゆのちゃんに差し上げたのよ。」


「……そんな……」


「ほら、椿。家元がお待ちかねだ。早くしなさい。」


先に歩いて行った両親に促され、彼女はその場を去った。







< 180 / 337 >

この作品をシェア

pagetop