家元の花嫁【加筆修正中】


私は隣りにいる隼斗さんのお母さんに目を向け…。


「あの…、本当なんですか?この帯留め……」


「本当よ。それは私があなたにあげたもの。隼斗からは無理強いするなって言われているけど、私の気持ちは分かって欲しくて…」


「ですが…こんな大切なもの、私が頂くわけには…」


「ゆのちゃんが隼斗の事を大切に想ってくれていることは知ってるわ。これでも、母親だから…」


「ですが…」


「今は家元継承のしきたりも気にしなくていい。隼斗の婚約者として…大変なあの子を支えて欲しいの。これは母としてのお願いよ…」


「・・・・・」


「再来月の誕生日を過ぎたとしても、構わないの。息子が、心から想っている女性と幸せになって貰いたいだけだから。」


「・・・・・」


「今は…ただ、あの子のそばにいてくれるだけでいいから……」


「…………はい」


「ありがとう……」


私はお母さんがあまりにも切実に言うから、つい“はい”って答えてしまった。


どうしよう……。本当にいいのかなぁ?


その後は、頭の中が“どうしよう”ばかりで、お客様への対応をどうしていたのか……記憶になかった。


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