小さな幸せ
「惣、お弁当忘れてる。」


「おおっと、いつも給食だから忘れるところだ。」


「今日、晴れてよかったね。」


「そうだな、これで雨だと厄介だ。

 まあ。バス旅行は雨天決行だけどな。」


「楽しんできてね?」


「楽しめるか、引率は大変なんだぞ。」


「はいはい、時間無くなるよ行ってらっしゃい。」


「今日検診だろ、どっちか分かるかな?」


「気が早過ぎ、どっち道聞くつもりないしね。

 ほら、急いで!」


「ン、じゃ行ってくる。」


惣は私のホッペにキス一つ残して

階段で駆け下りて行った。


ここ4階なのに、朝から元気な人。


あたし達は去年のクリスマスイブに籍を入れた。


というのも、あの日、

お腹に小さな命を宿したから。


季節はもう春、5月も半ば

赤ちゃんはすくすく育ってもう7カ月。


お腹も目立ってもうマタニティ-しか着られない。


結局、就職を決める前にこうなってしまって、

目下あたしの趣味といえば、

食育ブログの更新。



それとお義母さんのとこのお手伝い。


あいかわらずコスプレ好きで



今日のあたしは猫耳メイド。


さすがにいい歳して耳としっぽは恥ずかしい。


お腹大きいし。



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