小さな幸せ
「惣ちゃん、いいのよもしよければずっと家に住んでも。」

土方の家は、皆優しく俺たちを受け容れてくれる。

しかし、これがずっとでは気づまりになり

今までのようないい関係は望めなくなるだろう。

父は、俺達が当面生活していける金と、保険金を残してくれている。

母さえもうちょっとシャンとしてくれれば、

部屋を借りて暮らし始められるのだが、

もう49日も泣けばそろそろ涙が枯れてくれないかと思う。


俺が生まれる前日だってペンを離さなかった母。

俺の母親は

夢森真咲というペンネ-ムの少女漫画家。

高校生の時からプロ漫画家で、父は小学校の教師だった。

父が実家の仙台に戻る時に、押し掛け結婚した母。

そんな母は俺から見れば、

家族という自覚がないんじゃないかと思うほど勝手で、

漫画がすべてのような人だったけど、

父を亡くして初めて母は父をとても愛していたんだと理解した。




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