赤い狼と黒い兎Ⅱ
『ちょっ、唯!?』
首筋に顔を埋めていた唯兎が、少しだけ不服そうな顔であたしを見上げてきた。
「……何?」
『いや、何じゃないし!手!』
「手、が何?」
『あんたバカ!?普通分かるでしょ!てか、ここでヤる気かっ!』
そう叫びに近い声を上げれば、当の本人はきょとんとした顔で“当たり前だろ?”という視線を送ってきやがった。
…絞めてやろうか。
「お仕置きだよー?それに、キスまでとか言ってねぇし?」
『うっ……』
そ、そうだけど…っ!だとしても!
『もういいじゃん!お仕置きはっ』
「ダメでーす。…ま、たまにはいいじゃん?」
『何!?たまにはって!』
「だって馨、普通にチューはしてくれてじゃん」
『それとこれとは話が別ですけどっ!?』
「だいたいさぁ……」
そう言って耳元に口を寄せて、ニヤリと笑う。
「焦る馨なんてレアじゃん?…ある意味そそるよ」
『!?』
Sか!お前はっ!!
『んぁ…っ、』
耳朶を甘噛みしてから、首筋に吸い付く。その間に左手はだんだんと上に上がってくる。
ちょちょちょ、マジか…。ここならまだ部屋のがマシなんだけど…。
というか徐々に面倒くさくなってきた。
『…唯、誰か…来るかもよ…?』
「誰も来ねぇよ。」
いや…でも、足音が…聞こえる気がするんだけど…。ちょっと?
『んっ、あ…っ…ねぇ、』
「黙って」
『んんっ』
噛みつくように唇を塞がれて、何も言えなくなった。
う~ん…、どうしようも出来ない…。というかこんな状況見られたら恥ずかしいんだけど。
いや、恥ずかしいだけじゃ済まない気がする。…とりあえず一番見られたらヤバいのは亜稀羅で…。