赤い狼と黒い兎Ⅱ
「どうだろうなって…」
曖昧に言葉を濁したあたしに、唯兎から訝しげな視線を向けられた。
『……何?』
「…またひとりでやろうとしてねぇよな?」
そんな風に聞かれて分かりやすく溜め息をつくと、むっとした表情になる。
『してない。それならみんなに何も言わずに勝手に動いてるよ』
「……なら、いいけど」
まだ納得してないみたいだけど、あたしは今回はひとりで動くつもりはまったくない。
それに、ひとりで動くくらいなら朱雀に“手伝って”なんて言わないし、こんな話もしない。
「でもさー、馨?」
『何、向日葵』
「何でそこを潰すまでに至ったの?」
向日葵に痛いところを突かれ、言葉に詰まった。
なんとも言わないあたしに向日葵は首を傾げた。
「え、だって馨達は“世直し”の為に族潰しとかやってんでしょ?…どう考えてもその族は何も無いんじゃ……」
『……』
…何もなけりゃ、そんな奴らの事なんか調べてないよ。
「…馨?」
『――…何で、同盟とか傘下作んないか、わかる?』
「えっ?」
質問を質問で返したあたしに戸惑う向日葵。
『内部で反乱が起きないように、情報が漏れないようにするためなんだよ』
「……」
『“No.1”になるためには、周りが邪魔なんだよ?…普通じゃない奴なら、周りを消してくんだよ?』
言ってる意味、わかるよね?、そう視線で訴えかけるとキュッと唇を噛み締める向日葵。
『詳しい事は情報が集まり次第また話すよ』
少し重い空気。その空気を切り裂くように、春架達が入って来た。