赤い狼と黒い兎Ⅱ
「で、何の話?馨」
琉樹が眼鏡を光らせて、あたしを見やる。
『うん。…さっき先代が言ってた抗争の事だ』
そう言うと部屋の空気が緊張感に包まれた。
『近からず、遠からずデッカイ抗争がある。まだ相手もこっちも探り探りの状態だ』
「待った。馨が今までひとりでやってたって事?」
琉樹のその言葉に、一斉に視線がこっちを向いた。
『……そうだけど。何か問題でも?』
「問題でもって…。何でまた馨が…」
琉樹がそう言うのも無理はない。大体調べ物があるとあたしは琉樹に頼むから。
『……別に珍しい事じゃないだろ?』
だけど、まだ相手の事を言うには情報が少なすぎるし…何せ、その事を言える程勇気も無い。
「まぁ…そうだけど…」
『…相手のわかる範囲の情報を言うと、』
琉樹には悪いけど、今回は琉樹に調べさせれるようなものじゃないから。
あたしに関わる事…。いや、正確には“嶽に”…かな?
『傘下、同盟共に無し。人数は今のところ300人弱くらい』
「同盟、傘下無しって…」
唯兎が驚いたように声を出した。
『まぁ、それなりに強いよ』
別にそこは重要視してなくて、あたしが一番気になってるのはそこの総長である女の事だ。
総長に女が居るなんてよくある話だが、どうもそこに居る女の顔を見た事あるような気がする。
「そこと、あたしらが戦うの?」
『……さぁ、どうだろうな』