キミの知らない物語。【完】
昔のことを思い出しながら、重たい瞼を無理に開け、目をこする。嫌な夢見たな。
働かない頭で枕元の上の壁に貼ってあるカレンダーを見て思いだした。今日は悠也の誕生日。
菜乃子と悠也にとって、とっても大事な日。
「上手くいけば、いいね」
なんて、思ってもいないことを口に出し、ベッドから這い出る。
だって、そう言い聞かせないと。自分が嫌な人間になりそうで。気持ちを抑えられない気がして。どうしようもなく泣きそうになるんだもん。
「――陽子ー、今日悠也くんの誕生日でしょ。それでねー、プレゼント用意してみたんだけど、」
リビングに下りると、ご機嫌なお母さんがショッピングセンターの買い物袋から綺麗に包装された何かを取り出した。
「これ! マグカップ! 悠也くんにあげてちょうだい」
「えー?」
――結局あたしは、悠也へのプレゼントを買ってない。
だって嫌なんだもん。
菜乃子と比べられるの。
悠也は菜乃子からとびっきりの“プレゼント”をもらえるんだから、いいじゃんね。
あたしからのなんか、いらないだろう。