深海の眠り姫 -no sleeping beauty-





「な、え、―――そんな人が、どうして」


「まだ教えてやらない。けど、環は俺のそばにいろ。…会社でも、プライベートも」




伸ばされた腕。
私を簡単に捕まえて、抱き寄せる腕。


その声は麻薬みたい。
聞いていると、逃げなきゃならないのに身動きがとれなくなる。



「そう。…環は、いい子だな」




触れたところが熱い。


わかんない。わかんない、けど。
でも、芦谷さんの腕の中は気持ちがよくて。


このまま死ねたらいい、なんて思えてしまった。





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