深海の眠り姫 -no sleeping beauty-





「―――環、手出せ」


ユウさんがいなくなって変な静けさが部屋中を包む中、芦谷さんがそう言ってきた。


私がおずおずと右手を出すと、芦谷さんは反対の手を指差す。



「侑が触った方の手だよ」


普段よりも低いその声に少し怯えながら左手を出すと、芦谷さんは手首に舌を這わせだした。



「…っ、―――!」


ぐるりと一周、円を描くように動いていく舌。
元の位置に戻ると、さっきユウさんにキスされた辺りに同じように唇を落として。
ほんの少しだけ、甘噛みされて。




(ぞくぞく、する…っ)





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