深海の眠り姫 -no sleeping beauty-





背筋に電気が走ったような気がした。


―――心臓が甘く疼いて、舐められたところが燃えるように熱くて。
私の掌を自分の頬に当てる芦谷さんを直視できなくて、私はとっさに俯いてしまう。


しかも、それが嫌じゃないなんて、…嬉しいだなんて、知られたくなかったから。






「…あんま嫉妬させんなよ」


「しっ、と…」


そう繰り返すと、芦谷さんの頬に触れる手がいっそう熱を帯びる。



「消毒だよ。―――ほかの男なんかに触られてんじゃねぇ」


そう話す芦谷さんは首まで真っ赤になってしまっていて、その姿を目の当たりにした私は頷くことしかできなかった。





< 74 / 159 >

この作品をシェア

pagetop