深海の眠り姫 -no sleeping beauty-





………最近、芦谷さんとは仕事の話以外あまり会話をしていなかった。
それでも眠るときは無言で私を抱き寄せてくれて、私はその腕に甘えて眠る。
そうするときは何も考えずにいられるくせに、それ以外ではつい芦谷さんを避けてしまっていたのだ。


(こんなんじゃ、だめだ)


これ以上芦谷さんに甘えてはいられない。
だから自分のアパートに帰る、と毎日言おうと決意はするのにいざ芦谷さんの顔を見ると言えないんだ。










「―――難しい顔してどうしたの?」


その声にはっと顔を上げると、目の前にはユウさんの姿があった。





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