深海の眠り姫 -no sleeping beauty-





「あ、…撮影、は?」


「休憩中。ほら、あっちでコーヒー飲もうよ」


ユウさんはそう言うと私の手を引いてスタジオの外に向かって歩き出す。
よろけながらもついて行くと、廊下の隅の方から囁くような話し声が聞こえてきた。



「―――直人さん、最近つれないんだもんなぁ」




甘ったるいようなその声が彼の名前を呼ぶ。



「今ウチで猫飼ってんだよ」


そう答えた声。
聞き間違いようのない芦谷さんの声に、私の頭の中は一瞬で真っ白になってしまった。





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